創立10周年を振り返って
納屋町商店街振興組合
小林満
“赤く咲くのは けしの花 白く咲くのは 百合の花 どう咲きゃいいのさこのわたし 夢は 夜開く”という藤 圭子さんの第1回日本歌謡大賞に輝いた名曲がありますが、さしずめ「KICSの花と夢は夜開く~」と言うことになるでしょうか。
小生が納屋町商店街から前任者にかわりKICSの会議に参加したのは、恐らく平成7年か8年のことでした。伏見地区の大先輩、池上氏に会議の席へ連れて行ってもらったのが始まりでした。それ以来チャーターメンバーで今も現役の樋爪、安盛、今中、三氏に次いで古株になってしまいました。現在でもKICSの協議会には各商店街、業種組合から出向の形でメンバー(担当委員)が出てこられています。私が出向いた当時は京都の9商店街で構成されていて常に夜の会議は十数名で行われていました。それが今や、約40団体から40数名もが会議に出るようになりました。
そのように人数が増えてもKICSスピリットは衰えを見せず、会議は踊る♪
皆、商売人なので営業が終ってからの会議となり、午後8時過ぎから午前0時、1時頃まで会議をするのです。一般のお人が聞けば「そんなに長い間、一体何を話し合っているのか?」と疑問に感じられるでしょうが、KICSのリーダー的存在である四条繁栄会の樋爪氏等がこだわってこられたのは、多数決ではなく全員が「納得するまで、納得させるまで、とことん議論する」と言うのがKICSのスピリットなのです。
自身が代表している組合の規模の大小、新旧などは全く関係なく純粋に議論の舞台に登れるのです。そのかわりに、相手を納得、説得させるだけの資料の裏付けと理論が必要とされ、小生のように雰囲気と“なーなー”で話を進めていくタイプは、ディベートの道場に入れられたようなものでした。
勿論、各出向者は自身の組合の理事会に持って帰って説明が出来、その利益が損なわれないように、また同時にKICSの利益も損なわれないように、そしてKICSのスピリットに反しないように夜な夜な会議を続けているわけです。最低でも月に1回、夜の協議会が、そして各委員会の会議が月1回~数回あります。そして通常、出向者は商店街・業種組合の理事でもありますので、そちらの理事会やら委員会もあるはずです。それも自身の商売をちゃんとこなしてという前提の下にです。皆さん本当に良くやられていると思います。本当に。でもそれは自分の所属する組合やKICS自体の為ということもあるでしょうが、やっぱり、自分自身の為に役立つと言うか、面白い(これは興味深く役に立つと言う意味)からなのでしょう。小生自身、普通なら知り合いに成らせていただけない有名商店街の御仁との親交をKICSの活動を通じて持てると言うことが一番の宝だと感じています。単に飲み友達が増えただけとも言えますが。
KICS協議会をコーヒーに例えれば、KICSの賢者や協力企業の生み出したアイデア(美味しいコーヒー豆)をKICSの協議会というフィルターを通して美味しいコーヒーに仕上げ、それを各組合や社会に提供するというのが役割だと思うのです。
Bank Posから始まった事業がクレジットカード・デビットカード一括処理事業に発展し、今やインターネット事業、物流合理化事業にまで発展を遂げたのは勿論この面倒な、いや素晴らしいKICSスピリットが引き継がれてきたからでしょう。
ところで「デジタル・デバイド」という言葉があります。一般には「情報格差」とか「情報化による経済格差」と説明されていますが、もともとの意味は「情報革命に乗る人と乗り遅れる人との貧富の拡大」と言う意味だそうです。が、もっとはっきり表現すると「コンピューターのような情報機器すら駆使出来ないような者は、激変する技術革新についていけず、競争から落伍する」と言う意味になるでしょう。まさに、KICSはこの競争に勝利した商人の集団なのです。しかし、「機会は公平に与えるが、結果はその人の能力次第」という西洋思想の根底にある精神をKICSは掲げるのではなく、KICS加盟団体は規模の大小はあれ、全てが良い方向に向かうように出来るだけの援護は惜しまないという、京都KICS方式の運営で現在まで来ているのです。
また、KICSのシステムをビジネス特許に登録し、利用されたい商店街・団体等には無償で利用権を与えると言うように互助の精神も忘れてはいません。
このように、素晴らしい風土を醸成してきたKICSも我々出向者が所謂手弁当で頑張ってきたから成し遂げられたと言う所があるでしょう。今後はこれだけ巨大化したKICSの運営を40数名の多人数の協議会委員で、また、手弁当でどこまで運営しきれるかが一番の課題でしょう。しかし、KICSスピリットはこれからも廃れることなく商人・町衆がいる限り続くことでしょう。
最後に、良い経験を与えてくれ、素晴らしい御仁と出会う機会をも与えてくれ、商店街・社会に美味しいコーヒーを与えてくれたKICSに心から御礼を申し上げたい。そしてその夜遅くまでの活動を応援してくれた妻と娘二人にも御礼を言いたい。これからもよろしくお願いしますと。